骨折、関節疾患(脱臼、靭帯断裂)のような整形外科手術は他の手術と異なり、手術経験だけでは成功しません。日々新しい手術法や器具が開発されるため様々な講習会や実習へ参加して情報や技術を取り入れていく必要があります。
当院では整形外科に関する国内外のセミナーや実習を受け常に新しい技術を取り入れています。また様々な骨折に対応できるような種々のインプラント、装置を取り揃えております。
椎間板ヘルニアはミニチュアダックスフントでは有名な神経疾患ですが、その他の犬種でも発生します。
現在でMRI検査が出来るようになったため、診断は以前より正確に行えるようになりました。しかし診断がついたからといって治る訳ではありません。
その治療として重要なのが手術とリハビリテーションです。当院では手術が必要な症例には積極的にお勧めします。
しかし、動物の状態やオーナー様のご希望によりリハビリテーションにて治療をすすめていくこともあります。
また当院では椎間板ヘルニア以外の神経疾患にも対応できるような人医療の脳外科に使用する超音波外科機器も設置しております。
特に多い症例について
橈尺骨骨折
ソファーやイス、抱っこされた状態から落下するなどして、前肢の橈尺骨を骨折するケースがあります。トイプードルやチワワ、ポメラニアンなどの小型犬やイタリアン・グレーハウンドなどの骨が細い犬種にみられやすい骨折です。
プレート固定法やピンニング法、創外固定法など、症例に合わせた治療法を選択します。当院は、従来のプレート法よりも強固で安定性のあるインターロッキングシステムのSOP、LCP による治療にも対応しています。
膝蓋骨脱臼
先天性や外傷性により、膝蓋骨が内側や外側に脱臼します。脱臼の程度は、グレード1~4に分類され、軽度のものではスキップ様歩行がみられたり、重度のものでは後肢を挙上して地面に着けなくなったりします。
滑車形成術や脛骨粗面転移術などの骨組織の再建術、筋膜を縫い縮めたり縫合糸で内旋を制動させたりする軟部組織の再建術を組み合わせて治療します。
前十字靭帯断裂
ボール遊びや走行中の急な方向転換による膝関節の過度の伸展が原因で起こる急性断裂と、加齢や免疫介在性疾患などの全身性疾患により起こる慢性断裂(肥満犬に多い)があります。
関節内固定法や関節外固定法、矯正骨切り術など、症例に合わせて治療法を決定します。当院では、特殊な器具を必要とする脛骨高平部水平化骨切術(TPLO)による治療が可能です。
椎間板ヘルニア
脊柱(背骨)と脊柱の間にある椎間板が変性し、脊柱管内に突出することにより脊髄を障害し、様々な神経症状を引き起こす疾病です。
頚椎や胸椎後方、腰椎前方領域に発症が多く、ミニチュア・ダックスフンドやビーグル、ウェルシュ・コーギーやシーズー、ペキ ニーズなどによく起こります。程度は、背中を痛がるくらいのグレード1から、起立できず深部痛覚が消失してしまうグレード5まであり、グレード5の場合は早期(発症後48時間以内)の手術が望まれます。
手術では、突出した椎間板に圧迫されている脊髄神経を開放するために、脊柱の一部を特殊な器具である超音波メス(SONO Pet)で削り、飛び出ている椎間板物質を除去します。
当院で扱っている機器の一部を紹介
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陽圧換気手術室(クリーンルーム)
外気が室内に入らないように空気の流れを設定している部屋です。微生物による汚染や感染を防ぎます。
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滅菌設備
オートクレーブ滅菌器および、エチレンオキサイドガス滅菌器により滅菌を行います。
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電動式ドリル
アタッチメントを変えることで様々な用途に用いることができるパワーツールです。骨折など様々な整形外科疾患の手術の際に使用します。
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エアー式ドリル
先端が高速に回転することで、骨を削る器械です。主に椎間板ヘルニアなどの手術で使用します。
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超音波手術器械
金属チップを振動させ、目的部位を破砕・乳化・吸引、また骨の切除なども可能にする機器です。肝臓切除や胆嚢の剥離、腫瘍の剥離、椎間板ヘルニアなどに対して使用します。
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関節鏡
少ない切開で関節内の観察や靭帯損傷の有無を評価を行います。